「陰翳礼讃」の世界

町家の魅力は何だろうと思う一つに、光のコントラストがある。

・嫁隠しの袖から大戸越しに見る通りの明るさ
・薄暗い座敷から庭を見ると、苔と常緑の樹が輝いている
・通り庭に落ちる天窓の光
・仏間の蝋燭の火
・格子越しの光が障子で拡散された室内の弱い光
・裸電球に照らされたベンガラで塗られた柱

屋敷のどこにいても、ハウスメーカーが作る新建材の家では感じることが出来ない陰影を見ることが出来る。単に古ぼけた古民家じゃないかと言えばそれまでだが、比べると親しみや温かさは前者が圧倒的に勝る。

谷崎潤一郎「陰翳礼讃」は正にその日本家屋の美を表現している。

厠の描写では、薄暗さ、清潔さ、静寂さを条件に上げている。光だけでなく、音や、湿度、気温、臭いなど五感すべてで、美を表現している。

当家の町屋も単なる古民家ではなく「陰翳礼讃」の世界を感じる場所であってほしい。

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