家宝「大學之道」
書を良くした6代井上清七が遺した「大學之道」という軸が家宝だと書かれた文章に出会ったので調べてみました。以下長文引用。
「大學之道」という一文は、四書五経の中の四書(論語、大学、中庸、孟子)の一つである「大學」に納められています。論語すら読んだことがないので調べると、「大学」は入徳の書として曽子(そうし)によって著されたもので一番初めに読むべき書となっています。二宮金次郎が薪を背負いながら読んでいるのは『大学』だそうです。また、松下幸之助も素読したと書かれていたので頑張ってみたが鍛錬が必要です。
昔の人は偉いと済ませるのではなく、よく素読して心を静める時間を持たないとダメだと気付かされれました。
で家宝の軸は見つかったのか?
【原文】
大学之道,在明明德,在亲民,在止于至善。知止而后有定;定而后能静;静而后能安;安而后能虑;虑而后能得。物有本末,事有终始。知所先后,则近道矣。古之欲明明德于天下者,先治其国;欲治其国者,先齐其家;欲齐其家者,先修其身;欲修其身者,先正其心;欲正其心者,先诚其意;欲诚其意者,先致其知;致知在格物。物格而后知至;知至而后意诚;意诚而后心正;心正而后身修;身修而后家齐;家齐而后国治;国治而后天下平。自天子以至于庶人,壹是皆以修身为本。其本乱而末治者否矣。其所厚者薄,而其所薄者厚,未之有也【大学の経一章】
大学の道は、明徳を明らかにするに在り。民に親しむに在り。至善に止するに在り。
止するを知りて后定まる有り。定まりて后能く静か。静かにして后能く安し。安くして后能く慮る。慮りて后能く得。物に本末有り。事に終始有り。先後する所を知らば、則ち道に近し。
古の明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、先ず其の国を治む。其の国を治めんと欲する者は、先ず其の家を斉う。其の家を斉えんと欲する者は、先ず其の身を修む。其の身を修めんと欲する者は、先ず其の心を正しうす。其の心を正しうせんと欲する者は、先ず其の意を誠にす。其の意を誠にせんと欲する者は、先ず其の知を致す。知を致すは物を格すに在り。
物格して后知至る。知至りて后意誠なり。意誠にして后心正し。心正しうして后身修まる。身修まりて后家斉う。家斉いて后国治まる。国治まりて后天下平らかなり。
天子自り以て庶人に至るまで、壹是こに皆身を修むるを以て本と為す。其の本亂れて末治まる者は否ず。其の厚うする所の者を薄うして、其の薄うする所の者厚きは、未だ之れ有らざるなり。【現代語訳】
大人が学ぶ道は次の三つである。第一は、自分が生まれつき持っている天与の素晴らしい徳(無限の能力)を存分に引き出し発揮する事である。つまり明徳を明らかにすることである。第二は、自分ひとりだけの修養に止まらず、それを人にも及ぼして、それぞれの徳(能力)を発揮するように導くことである。即ち、民に親しみ人心を新たにすることである。そして第三に、以上の二つの事を実現して理想の状態に到達できるよう倦まず弛まず努力を継続することである。これを最高の善=至善に止まるという。
人生の目的をしっかり自覚できれば、おのずから志が定まる。志が定まれば心が静まって、何事にも動揺しなくなる。そうなると、物事や状況をじっくりと思慮できるようになり、判断や処置に当を得て理想的な結果を得ることが出来るようになるのである。
物や事には根本と末節があり、始めと終わりがある。何が根本で、何から始めるべきか。其のことをよく心得てかかれば、成果も大いに上がるに違いない。
その昔、自らの徳で人民を感化し、天下に太平をもたらそうとした人々は、まず自らの国をしっかりと治めた。自らの国をしっかり治めようとした人々は、その前に自らの家庭を和合させる事に努めた。家庭を和合させようとした人々は、その前に先ず自らの特性を高めることに努めた。そして自らの修養として、心のありようを正し、心の動きに少しの邪念も入り込まないようにし、そのためには知識を拡充して判断力を磨くことに努め、さらにそのためには物事の道理、真理を究めるように努めた。
物事の道理を究めてこそ、初めて判断力を磨く事ができる。判断力を磨いて、初めて心の動きから邪念を取り除き、心のありようも正しくする事ができる。そうあってこそ、自らの徳性を高めることができるのである。自分の徳性が高まってこそ家庭を和合させ、ひいてはしっかりと国を治め、天下を太平にすることもできるのである。
上は天子から下は一般の庶民に至るまで、全ての人々が自らの徳性を高める事、つまり人としての本質を磨いていくこと、これが基本である。この基本がなおざりにされた指導者の下で、天下国家がうまく治まったという例はかつてなかった。
力の入れ方を厚くすべき修身に力を入れず、相対的に見て力の入れ方は修身より薄くてもいいはずの斉家、治国、平天下に厚く力を入れて、結果がうまく治まったという例もかつてなかったのである。
「家宝」出てきました。軸になっていて長く掛けられていたようで痛みもありました。

読もうとしたのですが私には難しいです。

確かに「大學の道」です。
立派な書だと一目見て感じました。
そして、落款は

「春亭之陽書」6代目井上春耕軒にあたります。
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